糖尿病・高脂血症・高血圧 外来治療実践メモ 

 実践的・具体的な外来治療アドバイスや薬剤選択方法

 注意;本内容は医師・薬剤師・看護師・栄養士対象です。その他の方はご遠慮ください。

 糖尿病や高脂血症、高血圧の患者さんは非常に多いにもかかわらず、教科書やガイドラインを見ても、その具体的な治療法は内容が多すぎたり、例外を考えすぎたり、また慎重になりすぎたりして思い切ったことが書いてないため分かりにくいのが現状です。僕自身も、最初はなかなか理解できませんでした。ここでは、不十分な知識ではありますが、僕なりの経験から得た外来治療法・薬剤選択を紹介します。本内容は、他科の先生に聞かれた時にアドバイスすることや、研修医の先生などにアドバイスすることをイメージしています。

注意;本内容は、一個人のメモです。実際の診療で利用される場合には、個人の責任でお願いします。

注意;本内容は、一般的な症例を考えて作成しています。個々の患者さんの状況によっては、禁忌となる場合もありえますので、十分注意してください。

注意;薬剤の選択は、それぞれの患者さんの状態や、またそれぞれの医師の考え、地域の特異性などによって、大きく異なります。以下は僕自身の考えですので、その点は十分理解の上、ご利用ください。

はじめに

 生活習慣病の外来治療は、薬を処方しただけでは、なかなか患者さんも継続できません。痛くもない病気に対してどうして治療が必要なのかよく説明し、納得の上に、生活習慣の改善を促し、それでもだめなら薬剤治療を選択します。生活習慣の改善も「食事と運動に注意して」「もっとやせなさい」などだけでは、効果がありません。患者さんの生活スタイルがどうなのか(職業・家族構成など)よく聞き、そこからどういう点が改善できそうか、一人一人違う生活パターンや、性格などを考慮の上、適切なアドバイスができるかどうかは、個人の力量にかかってきます。僕が大事だと考えているのは、治療の主役は患者さん自身だと言うことを、医療側も、医療を受ける側も理解することだと思います。具体的には、治療の選択は患者にできるだけ任せ、もし薬を飲みたくないというなら、無理に処方せず、時間をかけてゆっくり話していきます。生活習慣病は基本的には症状がないので、相手が少しでも納得できずに薬剤を内服しているようなら、それは継続できないと思います。患者主体の治療、悪く言えば、主導権は患者さんにとられるくらいでちょうどいいのではないでしょうか。あとはこちらが持てる知識を持ってアドバイスして、長い目で治療してきましょう。

高血圧

 まずは高血圧が多いと脳卒中が増えたり、心臓疾患が増えることを説明の上、塩分制限(外食制限・みそ汁・漬け物・麺類の汁に注意)と運動の推奨(1日30分以上、最低週3日)。肥満があれば減量も指導(標準体重の計算とどれくらいの肥満なのか教えてあげましょう)。禁煙も忘れずに。

 検査として、腎機能(Cre)、電解質(アルドステロン症)、薬剤使用前に肝機能チェック、高血圧があればコレステロールや、中性脂肪、尿酸、糖尿病もある場合があります。

 忘れてはならないのが二次性高血圧。クッシング症候群(クッシング徴候あればACTHとコルチゾールを朝食前に30分安静にして採血)や甲状腺機能亢進症(甲状腺腫大や頻脈あればTSHを)、先端巨大症、褐色細胞腫も少し考えて診察しましょう。

 心音と、頸部の血管雑音がないかはチェックしましょう。

 薬剤は、150/-mmHgくらいなら、生活習慣の改善を指導して、2-3ヶ月様子をみても良いと思いますが、160/-mmHgを越えていれば、最初から投薬しても良いと思います。何も既往のない人ならCa拮抗薬のノルバスクや利尿剤のフルイトラン、頻脈傾向(80-90/min)の若い人ならβブロッカーのテノーミンなど、高齢者で痴呆や誤嚥性肺炎の可能性を起こしそうな人ならACE阻害剤のコバシル、尿酸が少し高めならARBのニューロタンは尿酸低下作用もあります。尿蛋白少しでていたり腎機能が若干悪い人(Creが1.0-2.0)では腎保護作用のあるACEのタナトリルやARBが適切です。レントゲン上若干心肥大がある人も、ACEやARBが適切です。

 もし初診から180/-mmHgを越えているような人は、目標に達するのに2剤以上必要なことをあらかじめ説明しておくことも重要です。組み合わせは様々ですが、Ca拮抗薬のノルバスクをだして、ARBのニューロタンやブロプレスなどを追加処方します。

高脂血症

 コレステロールは僕は、男性では240mg/dl以上で治療します。女性では心血管系の既往がない人は現段階でエビデンスが確率していません(2005年5月現在)ので、僕は糖尿病や高血圧がないかスクリーニングして、食事(過食に注意)と運動指導で良いと考えています。男性では240mg/dl以上で治療した方が良さそうです。女性でも280mg/dl以上なら個人的には治療します。また家族歴が濃厚な場合にも治療しましょう。まずは食事運動指導。そして禁煙指導。検査はHDLやTG、一度はLDL-Cも。糖尿病や高血圧のチェックも忘れずに。薬を使う前に肝機能とCPKはチェックしておきましょう。薬剤はメバロチンでスタートして、改善が乏しければ、リピトールやリバロを。

 中性脂肪に関しては、まず朝食前の検査か確認。2-3日の食事の影響が大きいので、問診します。慢性的に高い人は、過食傾向にあると考えられるので、食事運動療法の徹底と、肥満の改善。もし生活習慣の改善でも無理なら、ベザトールを使用。内臓肥満があって、メタボリックシンドロームのような症例ではエパデールも選択肢です。

 低HDLコレステロールは、最も重要視すべき検査と思われますが、なかなかこれを増加させることは難しいので、コレステロールや高血圧、肥満など他の要因を徹底的に管理。運動も忘れずに推奨。

糖尿病

 まずは、問診。いつ発症なのか推測。体重はいつから減ったか。またはいつ頃から増えたか。食事内容は? ジュース類の飲み過ぎはないか? 糖尿病家族歴は? 1型なのか2型なのか、それともステロイド糖尿病か? まれだが膵臓癌などはだいじょうぶ?

 検査として、血糖とc-peptide、糖負荷検査は糖尿病の診断とインスリン分泌能を見る上でも有用ですが、HbA1c7%以上では糖尿病は明かですし、糖負荷検査は高血糖を誘発して危険です。1型が考えられるならGAD抗体もチェック。

 合併症チェックとして、足のしびれの問診、アキレス腱反射、尿蛋白チェック。HbA1c7%以上なら眼科受診も忘れずに。

 指導は、まずは、痛くもかゆくもない糖尿病なぜ治療が必要なのか、それは合併症予防のためと説明。糖尿病性網膜症による失明、腎症による透析、足壊疽など具体的に説明するとイメージがわくと思います。さらにHbA1cの意味も説明。次に、栄養指導。腎機能に問題なく、目も大丈夫なら運動を指導(食後30分から1時間で、30分以上の運動を最低週3 回)。外来での簡単な食事の注意点としては、喉が渇いた時は水かお茶。ジュースの飲み過ぎ、健康のためにとヤクルト、栄養ドリンク、スポーツドリンクの飲み過ぎも結構あります。果物の食べ過ぎや脂もののとりすぎにも注意。夕食は軽めにして、食べてすぐ寝ない。

 初診でHbA1c7%台なら食事運動療法の徹底で外来経過観察。改善なく、肥満歴あり食後二時間血糖を下げたいなら、放屁と肝機能障害を説明してベイスンまたはグルコバイ、さらにインスリン分泌の遅延が予想されればナテグリニドのスターシスやファスティック、グルファストと組み合わせればより強力。問題点は毎食前処方は忘れやすいことと、値段がやや高いと言うこと。一日一回なら古くて安いメルビン(インスリン抵抗性の改善・作用はマイルド・ただし高齢者ではまれだが乳酸アシドーシスの危険性あり慎重に)か、SU剤のアマリール1mg(インスリン分泌促進作用と抵抗性改善作用があり使いやすい)を。以前使われていた、ダオニールやオイグルコンは、インスリン分泌促進作用が強すぎるため、高齢者などでは遷延性低血糖の危険性もあり、現在では使用頻度は減っている。

 初診の患者さんは食事、運動療法の徹底でHbA1c 10%が半年後に正常化も珍しくはない。

 もし、アマリール1mgで効果なくなれば、2mg、さらに3mg、併用療法としてメルビンの追加、ベイスンの追加などを考慮。インスリン分泌能が落ちている症例では、あまり内服薬剤で粘らずに、はやめにインスリン注射へ切り替えを。

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